論文解説

オメガ3(魚油)サプリと心臓の病気、差が出たのは別の薬

公開 著者 そのサプ編集部

結論

魚油(オメガ3)の粒を飲んだ試験10本・77,917人分をまとめたメタ解析では、心臓の病気に差は見られなかった[1]。その後の大きな試験でも、1日1gの粒では健康な中高年と糖尿病の人のどちらにも差は見られなかった。差が見られたのは、中性脂肪が高くスタチンを飲んでいる人が1日4gのEPAだけの薬を使った試験で、この試験では脈が乱れる病気での入院も多くなっていた[2][3][4]。

メタ解析

判断の材料は
量と中身

オメガ3(魚油)サプリと心臓の病気、差が出たのは別の薬のイメージ写真(原料・カプセルなど)
目次
  1. 魚油サプリと心臓の病気を調べたのは、どんな研究?
  2. 魚油の粒を飲んだ人は、心臓の病気が少なかった?
  3. この研究でわからないことは?
  4. 魚油サプリを飲んでいる人は、何を確かめればいい?
  5. 魚油サプリと心臓について、よくある誤解は?

魚油サプリと心臓の病気を調べたのは、どんな研究?

中心になったメタ解析の概要
項目内容
対象魚油の粒を試した試験の参加者(平均64.0歳)
人数77,917人(試験10本)
期間試験ごとに異なる(原著を参照)
デザインメタ解析(RCT10本)
主要結果心臓の病気に差は見られなかった
研究カード(対象・人数・デザイン・主要結果)

中心になったのは、魚油(オメガ3)の粒を飲む群と飲まない群を比べた試験10本、合計77,917人分をまとめたメタ解析である[1]。メタ解析とは、複数の研究の結果をまとめて分析する研究である。

このメタ解析が集めたのは、ランダム化比較試験(RCT)だけだった。ランダム化比較試験とは、参加者をくじ引きで、調べたいものを飲む群と比べる群に分けて、結果を比べる試験である。くじ引きで分けるので、飲んだかどうか以外の条件がそろいやすい。

集めた試験は500人以上の規模のものに限られ、参加者は平均64.0歳の中高年が中心だった[1]。

編集部は、このメタ解析に加えて、その後に発表された大きな試験3本も「何を・どれだけ飲んだか」で整理した[2][3][4]。

魚油の粒を飲んだ人は、心臓の病気が少なかった?

魚油の粒を飲んだ試験10本・77,917人分をまとめても、心臓の病気(心臓の血管の病気による死亡や心筋梗塞など)や主要な血管の病気に、差は見られなかった[1]。心臓の病気になったことがある人、糖尿病の人、スタチン(コレステロールの薬)を飲んでいる人などに分けて見ても、結果は同じだった。

魚油の粒を試した試験10本の参加者の中で

7.8万人
合計で、心臓の病気に差は見られなかった人数

健康な中高年や糖尿病の人の大きな試験2本では

1g(1日)
心臓・血管の病気に差が見られなかった粒の量

中性脂肪が高くスタチンを飲む、心臓・血管の病気か糖尿病がある人の中で

21人に1人
1日4gのEPAの薬で、心臓・血管の病気が1人少なくなる計算
差が見られたのは、1日4g・EPAだけの薬を、条件を絞った人が飲んだ試験だった

その後の試験でも傾向は変わらなかった。心臓の病気がない米国の50歳以上の男性・55歳以上の女性25,871人が1日1gの粒を飲んだ試験(VITAL)では、心臓・血管の病気に差は見られなかった[2]。この試験は、見た目が同じ「ニセの粒」(プラセボ)と比べている。プラセボとは、見た目は同じで調べたい成分を含まない粒である。

糖尿病の15,480人が1日1gの粒を飲んだ試験(ASCEND)でも、重大な血管の病気が起きた人は8.9%と9.2%で、差は見られなかった[3]。この試験で比べる側に使われたのは、オリーブ油の粒である。

差が見られたのは、量も中身も違うものだった。中性脂肪が高く、スタチンを飲んでいて、心臓・血管の病気か、糖尿病と危険因子がある8,179人が、EPAだけを精製した薬(イコサペント酸エチル)を1日4g飲んだ試験(REDUCE-IT)では、心臓・血管の病気が起きた人は、ニセの粒の群の22.0%に対して薬の群で17.2%だった[4]。

この差は4.8ポイントで、21人に1人の割合で心臓・血管の病気が少なくなる計算になる[4]。同じ試験では、脈が乱れる病気(心房細動・心房粗動)で入院した人が、薬の群で3.1%、ニセの粒の群で2.1%だった[4]。心房細動とは、脈が不規則に乱れる心臓の状態である。重い出血は、薬の群で2.7%、ニセの粒の群で2.1%と報告されている[4]。

この研究でわからないことは?

わからないことは、対象の範囲、粒と薬の中身の違い、計算した数字の読み方にある。結果を自分に当てはめる前に、この点を分けて読む必要がある。

この研究でわかること

  • 魚油の粒では、心臓の病気に差は見られなかった
  • 1日1gの大きな試験2本でも差は見られなかった
  • 差が見られたのは1日4g・EPAだけの薬
  • その薬では、脈が乱れる病気の入院が多かった

まだわからないこと

  • 若い人や日本の人にも当てはまるか
  • どの量・組み合わせでも差がないか
  • EPAだけの薬で差が見られた仕組み
結果を自分に当てはめる前に、対象・中身・量の違いを分けて読む

まず対象の範囲である。メタ解析の参加者は平均64.0歳の中高年が中心だった[1]。若い人や日本の読者にそのまま当てはまるかは、原稿では扱っていない。

次に粒の中身である。メタ解析に入った試験は、毎日飲むEPAの量が試験ごとに違っていた。どの量・どの組み合わせでも差がないとまでは、この結果だけでは決められない。

REDUCE-ITの結果は、スタチンを飲んでいて中性脂肪が高い人という、条件を絞った人での結果である。「21人に1人」は、22.0%と17.2%の差(4.8ポイント)から算出した概算で、条件の違う人には当てはまらない[4]。なぜEPAだけの薬で差が見られたのかという仕組みは原稿では扱っておらず、確かめられているのは、この条件の人で病気が起きた人の割合に差が見られたという事実までである。

ここは
見落としがち…

魚油サプリを飲んでいる人は、何を確かめればいい?

まず、いま飲んでいる粒に、毎日どれだけのEPA・DHAが含まれているかをラベルで確かめる。差が見られた薬の試験とは、量も中身も違う可能性が高いからだ。

次に、飲む目的を見直す。心臓のためだけに飲んでいるなら、今回整理した試験の結果は、続けるかどうかを考える材料になる。ほかの目的で飲んでいる場合、その目的についての研究は原稿では扱っていない。

健康診断などで中性脂肪が高いと言われた人も、粒の量を自分で増やして薬の試験に近づけようとしないことが大切だ。差が見られたのは条件を絞った人が薬として飲んだ試験であり、脈が乱れる病気での入院が多くなる面もあった。

体調に不安がある場合や、持病・服薬がある場合は、医師・薬剤師に相談してください。

魚油サプリと心臓について、よくある誤解は?

よくある誤解は、薬の試験で差が見られた結果を、ふつうの魚油の粒にもあてはめてしまうことだ。名前にEPAやオメガ3が入っていても、中身と量が同じとは限らない。

差が見られなかった大きな試験は1日1gの粒で、差が見られた試験は1日4gのEPAだけを精製した薬だった[2][3][4]。「オメガ3なら同じ結果になる」とは読めない。

もう一つの誤解は、「心臓の病気に差がない」を「飲んでも何も起きない」と読むことである。粒の試験での体への影響は原稿では扱っていないが、薬の試験では脈が乱れる病気での入院が多くなっていた。

「心臓に差が出た」のは、1日4g・EPAだけを精製した薬を、条件を絞った人が飲んだ試験での結果である。市販の魚油の粒の結果と同じものとして読まないでほしい[4]。

そう思って
いたかも…

よくある質問

毎朝
飲んでるけど…

魚油とオメガ3は同じもの?

原稿で扱った試験では、魚由来のオメガ3(EPA・DHAなど)を含む粒が使われた。一方、差が見られた試験で使われたのはEPAだけを精製した薬で、魚油の粒とは中身が違う。名前だけで同じものと考えず、何がどれだけ入っているかを見る必要がある。

魚をたくさん食べるのと、サプリを飲むのは同じ?

原稿で整理したのは、粒や薬を飲んだ試験だけである。食事として魚を食べることと心臓の病気の関係は、原稿では扱っていない。サプリの試験の結果を、食事の話にそのまま当てはめることはできない。

飲むタイミングを変えれば結果は変わる?

飲むタイミングによる違いは、原稿では扱っていない。原稿の試験で結果を分けていたのは、何を・どれだけ飲んだか、そして対象がどんな人だったかである。

中性脂肪が高いと言われたら、EPAの薬と同じものを飲めばいい?

差が見られた試験は、スタチンを飲んでいて中性脂肪が高く、心臓・血管の病気か糖尿病と危険因子がある人に絞った試験だった。同じ試験で、脈が乱れる病気での入院が多くなる面も報告されている。自分に当てはまるかは自己判断では決められない。体調に不安がある場合や、持病・服薬がある場合は、医師・薬剤師に相談してください。

出典

原著も
見てみようかな

論文(DOI)

  1. Aung T, Halsey J, Kromhout D, et al. Associations of Omega-3 Fatty Acid Supplement Use With Cardiovascular Disease Risks: Meta-analysis of 10 Trials Involving 77 917 Individuals. JAMA Cardiol. 2018;3(3):225-234. doi:10.1001/jamacardio.2017.5205
  2. Manson JE, et al. Marine n-3 Fatty Acids and Prevention of Cardiovascular Disease and Cancer. N Engl J Med. 2019;380(1):23-32. doi:10.1056/NEJMoa1811403
  3. ASCEND Study Collaborative Group. Effects of n-3 Fatty Acid Supplements in Diabetes Mellitus. N Engl J Med. 2018;379(16):1540-1550. doi:10.1056/NEJMoa1804989
  4. Bhatt DL, et al. Cardiovascular Risk Reduction with Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia. N Engl J Med. 2019;380(1):11-22. doi:10.1056/NEJMoa1812792

注記

  • メタ解析の対象:1年以上・500人以上の、くじ引きで分けた本格的な試験(RCT)10本・77,917人(平均64.0歳、平均4.4年)。EPA は1日226〜1800mg。
  • メタ解析の結果(相対リスク):心臓の病気(冠動脈疾患)による死亡 0.93(99%CI 0.83–1.03)、心筋梗塞(死亡以外)0.97(99%CI 0.87–1.08)、冠動脈疾患全体 0.96(95%CI 0.90–1.01)、主要な血管の病気 0.97(95%CI 0.93–1.01)。前もって決めたサブグループ(心臓の病気の既往・糖尿病・脂質・スタチン使用)でも差は見られなかった。
  • VITAL:米国の50歳以上の男性・55歳以上の女性25,871人、海洋性 n-3 脂肪酸1日1g、中央値5.3年。主要心血管イベント HR 0.92(95%CI 0.80–1.06)。
  • ASCEND:動脈硬化性の心血管病がない糖尿病の15,480人、n-3 脂肪酸1日1g(対照はオリーブ油)、平均7.4年。重大な血管イベント 8.9% vs 9.2%(率比 0.97、95%CI 0.87–1.08)。
  • REDUCE-IT:スタチン服用中で空腹時中性脂肪135〜499mg/dL、心血管病または糖尿病+危険因子のある8,179人。イコサペント酸エチル(高純度 EPA エチルエステル)1日4g、中央値4.9年。主要評価項目 17.2% vs 22.0%(HR 0.75、95%CI 0.68–0.83)。 EPA だけを精製した薬で、ふつうの魚油の粒ではない。
  • 「21人に1人」=REDUCE-IT の主要評価項目 17.2% vs 22.0% の差(4.8ポイント)から算出した概算(NNT 約21・約5年)。著者の学会発表でも NNT 21(95%CI 15–33)。
  • 心房細動・心房粗動による入院 3.1% vs 2.1%(P=0.004)。重い出血 2.7% vs 2.1%(P=0.06)。

本文の [1] [2] は上の番号の論文です。原著照合日:2026年10月30日。数値は原著・公表資料と照合したものだけを載せています(照合の手順)。

公的機関の資料

この記事の図解版は Instagram(そのサプ) にあります。